1分で読める 西野亮廣エンタメ研究所(2020年9月21日投稿記事)

西野亮廣エンタメ研究所

記事の要約

  • 素材をそのまま出した方が絶対に美味しいのに、「仕事している感」を出したくて「新鮮な刺身にケチャップをかける」みたいなことを素人はよくやる
  • 潰れる劇団の共通点は「(気を遣った)お客さんの感想を鵜呑みにする」こと
  • 最適解を見つける技術は量をこなさないと身に付かない

記事全文

おはようございます。

データをとったわけでもないのに、「『パンが好き!』と公言する人に悪い人はいない」と思っているキングコング西野です。

#だってそんなこと

#わざわざ公言する必要ないじゃん

#よっぽどパンが好きに違いない

#絶対にイイやつ

さて。

今日はマーケティング的な話は一旦お休みして、『塩梅の技術』というテーマで、お話ししたいと思います。

僕らの挑戦と失敗と挑戦の話です。

お付き合いください。

まず。

本題に入る前に「挑戦の殺し方」を2つ共有しておきたいと思います。

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▼① 恐怖!『ババア花現象』

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以前、世界的な建築家さん(名前は忘れた)がデザインされたホールで講演会をさせていただく機会がありました。

「日本の建築100選」的なものに選ばれている素晴らしいホールだったのですが、中に入ってみると、会場の至るところに「折り紙で作った花」がペタペタと貼られています。

講演会の主催者さんに「この花はどうされたんですか?」と質問すると、「運営スタッフの皆で作ったんです」と笑顔で返ってきました。

せっかくの建築は台無し。

世界的な建築に折り紙の花を咲かせて喜んでいるのは運営スタッフだけで、僕や、お客さんはタメ息をこぼします。

こういった「咲かせない方がよかった花」のことを僕は『ババア花』と呼んでいます。

素材をそのまま出した方が絶対に美味しいのに、「仕事している感」を出したくて、「新鮮な刺身にケチャップをかける」みたいなことを素人はよくやります

素人がこの事故を起こしてしまう理由は以下の2つ。

・皆で作っているうちに、思い入れが強くなりすぎて、視野が狭くなった。

(※ブレーキを踏む人がいない)

・良いものを見ていないから、今の自分の能力が「どの位置」にあるかが分かっていない。

(※その結果、「世界的なデザイン〈 自分達の折り紙の花」みたいなことになる)

『ババア花』を咲かせる人達は、「自分達が頑張って作った」という自分達の気持ちが最優先で、お客さん目線は二の次、三の次。

おかげで様々な挑戦が殺されてしまいます。

もし僕が、お客さんのことを想って、会場から『ババア花』を剥がそうものなら、「ひどい」と泣き出すのがババア花クリエイター達です。

とにかく「頑張った自分達の気持ち」が最優先。

それはエンターテイメントではなくて、ホームパーティーです。

正当な評価を下されるのが嫌なら、家族相手に家でやれ。

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▼ 潰れる劇団の共通点

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これまで、「夢やぶれて辞めていく芸人」を何千人も見てきました。

回を重ねるごとにお客さんが減っていき、ついには畳んでしまう劇団も、たくさんたくさん見てきました。

成功する劇団が成功する理由は様々ですが、「潰れる劇団」には共通点があります。

それは、「お客さんの感想を鵜呑みにする」です。

その芝居が、どれだけ面白くなくても、劇団のお客さんは「ツマラナイ」という感想を呟くことはできません。

終演後に演出家や出演者がエゴサーチしていることを知っているので、そこで「ツマラナイ」と呟こうものなら、関係が悪くなってしまいます。

劇団が小さければ小さいほど一人一人の感想が目立ちます。

#特に小さい劇団ほど知り合いにチケットを買ってもらっているので余計に感想が目立っちゃう

お客さんにとって、ネガティブな感想を呟くことはリスクでしかないので、基本的には「ポジティブな感想を呟く」か「内容に触れない」の二択です。

「潰れる劇団」の劇団員は、その感想を鵜呑みにして「おお!反応は上々だ!」と打ち上げに行き、捏造された成功を祝います。

#本当に成功していたらとっくの昔にお客さんは増えているよ

「この規模で、(お客さんと)この距離感でイベントをうってしまうと、基本的にはポジティブな感想しか集まらないよね」という前提で、イベントの反応を捉えられない劇団はキチンと潰れます。

オンラインサロンもそう。

「嫌だな」と思ったら、何も言わず辞めちゃうので。

……という二点を踏まえていただいた上で、今日の本題です。

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▼ ミュージカル『Poupelle of Chimney Town』の問題点

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昨日、一昨日と、オフ・ブロードウェイミュージカル『Poupelle of Chimney Town』のオンライン公演がありました。

本来ならば、一昨日、オフ・ブロードウェイで初日を迎えていたのですが、新型コロナウイルスにより公演は延期。

「このまま指をくわえているのも、なんかアレじゃないか!」ということで、今回、オンライン公演を開催する運びとなりました。

このプロジェクトの陣頭指揮を執るのは(株)NISHINOからは新入社員の「セトちゃん」です。

#まだ大学生らしい

一日目の公演終わり。

たくさんの友人から「オンライン公演を見たけど、あれは大丈夫なのか?」と連絡がありました。

「何事か?」と思ってアーカイブを見ると……なるほどなるほど。

挑戦を前に進めることが目的なので、言葉を選ばずに言うと……歌と踊りと芝居は文句無しに「100点」で、映像が「0点」でした。

おそらく知り合い(サロンメンバーさん?)に映像演出をお願いしたと思うのですが、プロが見れば一目瞭然、「この手の映像演出で飯が食えている人」の仕事ではなく、実にお粗末なものでした。

プロは結果が全てなので、0点のものは0点。

世界トップレベルの歌と踊りと芝居を見たいのに、「パソコン教室で覚えたての編集技術」みたいなのがバンバン差し込まれてきて、せっかくの世界トップレベルの技(素材)をことごとく殺しています。

いわゆる『ババア花現象』です。

才能に対する冒涜です。

それもあって、心配した友達から「何が起きているのだ?」と連絡がありました。

#西野だったら2秒で公演中止を決めて全額返金することを彼らは知っています

起きてしまったものは仕方がないし、大切なのはこの事故を二度と起こさないことです。

この時、問題を「個人」に押し付けるのは絶対に違っていて、「個人にミスを犯させたシステムエラー」を突き止めることが大切です。

まず、ここだけはハッキリしておきたいのですが、今回は「映像を担当してくださったスタッフさんのミス」では(絶対に!)ありません。

その方を選び、発注したのは運営側なので。

さらには、映像のスタッフさんは、運営側が「よし」としたから、その方向で演出をつけたのだから。

そのスタッフさんには1ミリも落ち度はありません。

…というわけで、初日の公演が終わった後(夜中にごめんね!)、今回のプロジェクトのリーダーの「セトちゃん」を呑みに誘い、話を聞いてみました。

すると、「あの映像が、そこまでのものだとは思いませんでした」と返ってきました(正直で、いいやつ!)。

つまり、

「見てきたエンタメの量」が圧倒的に不足しているから、「今回の公演の役者さんやスタッフさんがどれだけ凄くて(タレントで)、それに対して、映像編集(調理)がどれだけ邪魔をしているか?」

がキチンとジャッジできなかったわけです。

自分が、世界的な建築に『ババア花』を咲かせてしまっていることに気がつかなかった。

リーダーは、魚の状態を見たときに、焼くか、煮るか、刺身でいただくか……その最適解を秒速で判断しなければいけません。

そして、その判断をしてくれるのは「才能」や「センス」じゃありません。

「量」です。

塩梅の技術は量をこなさないと身に付きません

問題は「セトちゃん」にあるわけではなくて、「セトちゃんの生活サイクル」にあって、「一日の時間割の中にエンタメを観る時間が組み込まれていない」というシステムエラーです。

この状態だと、今後もセトちゃんは誤った判断を繰り返してしまうので、本人には「時間割を変えた方がいいよ」と提案させていただきました。

#怒鳴ったりしてないよ

#結構手を叩いて笑いながら言ったよ

そして、セトちゃんには、もう一つだけ忠告しておきました。

「あのチケットの売り方をしている以上、ネガティブな感想がセトちゃんのところに届くことはないので、それを踏まえて挑戦を続けよう」と。

「時代はBBQ型エンタメ」とは言うものの、世界で戦う時は「作り手の背景」なんて1秒も語られない『クオリティーの殴り合い』です。

歌と踊りと芝居が世界トップレベルならば、映像クリエイターも世界でトップレベルの人を引っ張ってこないといけないし、引っ張ってこれる自分になっていないといけません。

「お前の為ならやるよ」と言われるリーダーにならねばなりません。

そして、世界トップレベルのクリエイターが必要以上に技を押し出してきたら、「そこは押さえて」と説得力をもって言えるリーダーにならねばなりません。

たとえば、子供が(つたないながらも)一生懸命踊るダンスの映像に、最新のCGがバンバン入ってきたらうるさいじゃん?

今は「頑張っている子供」を素材そのままで見たいじゃん。

その塩梅を、時には鬼になって、秒速でミリ単位でおこなうのがリーダーの仕事です。

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▼ …とは言うものの

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『Poupelle of Chimney Town』は最高でした。

勝ったり、負けたり、悔しい思いをしたり……そこから逃げようと思ったらいくらでも逃げられる中、それでも挑んでいった彼らは何よりも美しいし、そんな不器用な彼らに「頑張れー!」と声をかけつづけてくださった方がたくさんたくさんいて……その光景は100年に一度のウイルスにやられっぱなしの2020年に見た希望でした。

こんな時間が、こんな人達が、もっともっと増えたらいいな。

心から、そう思いました。

小野さん、セトちゃん、ミュージカルチームの皆様、そして、彼らを支えてくださった皆様へ。

素晴らしい景色を見せてくださって本当にありがとうございました。

最後に、現在編集中の動画を貼っておきます。

子供達が練習して踊ってくれた『えんとつ町のプペル』のお遊戯会バージョンです。

#この動画は表に出しちゃダメだよ

#Facebookにムリヤリ長い動画を張りつけているので画質は最高に汚いです

#本チャンは鬼キレイです

いつか、ブロードウェイミュージカル『Poupelle of Chimney Town』を彼らに見せたいです。

必ず、世界を獲りましょう。

できるだけのバックアップをします。

現場からは以上でーす。

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